高校生活における「定期テスト」と「模試」の意義

今年はコロナ禍の影響で先延ばしになっていますが、通常であれば5月の中旬には第1回定期考査が始まります。4月は学校になじむためのオリエンテーションや集会が多く、授業はまだ本格的に始動していません。そのため、生徒達の意識も当然「お試しモード」のまま。そんな中にいきなり定期テストです。また、ほぼ同時期に河合塾の第一回模試もあります。

まだ入学したばかりで右も左も分からぬ中、この定期テストや模試を日々の勉強の中でどう位置づけるかは、現役での大学入試成功を目指す場合、非常に重要な決定となります。そこで、今回は「高校生活における定期テストと模試の意義」についてお話ししたいと思います。

定期テストと大学入試は全くの「別物」

よく保護者の皆様、生徒の皆さんに聞かれる質問の一つが「定期テストをしっかりやって学内順位を上げていれば大学に受かりますか?」というものです。

答えを端的に言ってしまうと、「受かりません」。

その理由は定期テストと大学入試では求められる力が大きく異なっているからです。学校の授業で先生が教えたことのみが出題される定期テストでは、試されるのは授業を聞く姿勢、先生が出した課題をしっかりこなす姿勢です。一方で、大学が求めるのは、授業を聞き、課題をやって得た知識を元に、自力で未知の問題を攻略する思考力です。授業をちゃんと聞けない、課題をしっかりこなせなければその先に進むことはできませんから、定期テストで測られる力は受験を勝ち抜く能力の「土台」になっているといえます。ただし、それはあくまで土台にしか過ぎません。先生によって指示されたこと「だけ」しかやらなければ、大学入試を戦い抜くことは不可能です。

このことをしっかりと理解している生徒は、必ず「自分だけの受験勉強ライン」を作ります。定期テストがあろうとなかろうと、自分の勉強ラインは揺るがせません。自分の目標から逆算してやるべきことを定め、それを淡々とこなしていきます。もちろん一日のうちで勉強にあてられる時間は限られていますから、自分の勉強ラインに時間を割けば、定期テストの勉強に使う時間は圧迫されます。では、定期テストはどうでもいいのか? これも実は大間違いです。上述したように、定期テストで測られる力は大学入試に必要な力の土台になるのですから、無駄なわけがありません。では、限られた時間の中で、どう勉強していけばよいのか。これが問題です。

定期テスト勉強を再考する

中学校時代、定期テストの点数は、「定期テスト勉強」をすることによって上げるものでした。早い生徒は一ヶ月前から、遅い生徒は一週間前から、学校の先生が配る範囲表を頼りにワークや課題プリントをこなします。特にワークは先生から提出を求められ、場合によってはその出来が内申点にも反映するため、皆熱心に取り組みます。このような勉強のやり方を中学校の3年間ですり込まれてきたこともあり、生徒たちは「定期テスト勉強」を当たり前のものと考えています。

しかし、中学校で培ったこの勉強法は、高校になると途端にうまくいかなくなります。まず、科目数が倍増します。さらに、授業が格段に「不親切」になります(この「不親切」は悪いことでは決してありません。高等教育では当然のことです)。授業の難度が上がり科目数が増えた状況で、中学校のような勉強をしようとすれば、準備期間は当然1ヶ月では終わりません。年に5回ほど定期テストがある場合、すべてにしっかり準備をしようとすれば、それだけで10ヶ月以上かかってしまいます。つまり、一年のほぼすべてが「定期テスト勉強」ということになるわけですが、この「一年を通して定期テスト勉強」をすることができる生徒は非常に稀です。大抵は中学校と同じ準備期間でやろうとして、やることの多さにパニックになり、最後にはあきらめてしまうのです。

この状況を避けるためには、「高校生の定期テスト勉強」を体得しなければなりません。

高校生の定期テスト勉強とは

高校生のテスト勉強とは、一言で言えば「授業中に完結させる勉強」のことです。定期テスト勉強に“のみ”熱心な生徒の多くは、実は授業を無目的に聞き流しています。機械的に板書するだけ、といっても過言ではありません。科目数が少ない中学校であればそれでも大事には至りませんでした。しかし、やるべきことが多い高校では、授業の中で必要な情報と不必要な情報を分類し、必要な情報はその場で、あるいは授業後すぐに理解しきらなければなりません。

では、必要な情報とはなにか。それは「因果関係」です。教科にかかわらず、学校の授業は「Aという前提からBになり、結果Cになる」という因果関係の連なりの説明です。たとえば数学の時間では、前提となるある式を変形、計算して次の式を導き出し、その式を元にまた次の式を、という風に先生が黒板に途中式を書いていきます。ある式からある式に移る「理由」。これこそが必要な情報なのです。この「理由」を意識して授業を聞いていると、自然と「自分が理解できないところ」が浮かび上がってきます。自分が理解できないところを特定することができれば、あとはそれを解消し、覚えるだけです。具体的方策としては、授業用ノートの紙面を二分割し、片方を板書に、もう片方のスペースを「因果関係が理解できない部分のコメント」に使う癖をつけます。すると、コメントを書くために自然と授業を意識的に聞くようになります。

授業内で吸収すべきことを吸収せず、漫然と授業を受け、授業外でもう一度同じことをやろうとする。この非効率な「定期テスト勉強」から脱却することができれば、受験に向けた「自分の勉強ライン」を実行する時間は十分に確保できるでしょう。

高校生の模試

高校入試を一般受験した生徒であれば、中3の段階で何度か模試を受けたことがあるでしょう。大抵は住んでいる都道府県で一般的な模試を一種類だけ受け、県立(都立)第一志望の生徒は入試直前期に県立(都立)専門のものを追加で受けていると思います。中学生の場合、地域ごとに支配的な模試に違いがあるとは言え、生徒から見れば自分が受ける模試は一種類です。

しかし、高校生の模試は違います。中学校で地域別だった模試の種類は「用途別」に変わります。

  1. 授業の定着度判定用
  2. 大学入試用
  3. 特定の大学合否判定用

大きくこの三つの種類に分けることが出来ます。①は主に高1〜高2期に学校内で強制的に受けさせられるものです(駿台ベネッセのものが有名)。②は有名予備校が主催するスタンダードな受験用模試(河合塾・駿台・代ゼミ・東進)。③は高3の2学期に行われる「○○大オープン」などと呼ばれるもので東大を始めとした旧帝国大学と早慶向けのものがあります。

①は模試といっても学校の内容をベースにした実力テストのようなもので、受験する生徒も学力中堅校在籍生までがほとんど。上位校の生徒は受けていません。そのため、一応算出される偏差値や志望校判定は不正確です。③は上述したように特定大学に特化していますので、そこを受ける予定がなければ必要ありません(そもそも高1では実施されていません)。

そこで残った②の大学入試用模試。これが重要です。規模的にも①や③とは異なり非常に大きく、また歴史もあります。上述したように大きなものは河合塾・駿台・代ゼミ・東進の四つがありますが、駿台(駿台ベネッセではなく)は難易度が高く最難関校〜難関校向け、代ゼミは近年大学入試にあまり力を入れておらず、東進は在籍生中心の受験のため受験者数が少ない傾向があります。よって、現状スタンダードといえるのは河合塾のものでしょう。

河合塾の模試は高1〜高2まではマーク・記述が一つのテストの中に混ざっている形式、高3からはマーク模試・記述模試と分かれます。受験科目は高1〜高2までは英数国、高3から理社が入ります。

高1から受験が必要か

大学受験をする生徒の場合、高3ではほとんどの生徒が上述した②の模試を受けます。しかし、高1〜高2の段階では学校のスケジュール通りに①の模試だけを受け、②を受験していない場合が多いのです。では、高1〜高2段階で②の模試を受ける意義はどのようなところにあるのでしょうか。その意義を以下にまとめました。

  1. 自分の勉強ラインのガイドとして使う
  2. 全国規模での自分の位置を知る
  3. 模試の使い方を学ぶ

この三点です。

Aから見ていきましょう。ここで言う「自分の勉強ライン」とは、学校の勉強以外に自分で計画を立てて進めていくもので、このラインが確立しているかどうかが大学入試の合否を決定します。ただし、自分で計画を立てるといっても高校三年間でこなさなければならない勉強の量は非常に膨大ですから、何をいつまでにどれくらい、という目安が欲しいところ。この目安を提供してくれるものが模試の範囲表と受験後に返ってくる成績表なのです。

Bも重要です。①の授業の定着度判定用模試だけを受けている場合、生徒の本当の学力と自己認識が大きくズレます。大体において①の模試と②の模試では偏差値にして10程度②の模試の方が低く出る傾向があります。これは上述したように受験する生徒の学力層の違いから来るものです。①の模試で偏差値が高く出て安心していたら、高3になったときにその落差に衝撃を受けることになるでしょう。

Cについては、模試を受けた後に何をするか、というもの。生徒達は中学生時にも模試を受けてきたと思いますが、成績表が返ってきた後にしっかりとそれを分析、対策した生徒は稀でしょう。多くは点数と偏差値だけ見て机の奥に押しやってしまうのです。大人(保護者や先生)は口を酸っぱくして「模試直しをしなさい」と言いますが、生徒はやりません。それは当然です。「やり方」と「意義」が分からないのです。実は、この「やり方」と「意義」を知り実行することこそが大学入試に向けた勉強の肝になるのですが、残念ながら習得にはそれ相応の時間がかかります。

上述したこれらの理由から、大学入試を考える生徒の場合、②のタイプの模試を高1段階からコンスタントに受験していくことを強くおすすめします。

塾での指導

エンライテックでは、個別面談において以下の四点を継続的に指導しています。

  1. “自分の勉強ライン”を圧迫しないテスト勉強のやり方
  2. 模試の分析法
  3. 模試分析結果を基にした勉強法
  4. 模試範囲をベースにした計画作成法

これらはいずれもいわゆる「高校生の勉強のやり方」の核心ともいえるものですが、生徒が独力で実行するのは至難の業です。やり方を理解したあとも、それを実行してみてうまくいかないところを洗い出し修正を加えるプロセスが必要になるため、習得には長い時間を必要とします。

大学入試を戦う上での理想的な姿は高1〜高2期にこれらのやり方を身体にしみこませて高3に臨むことです。

35年以上の指導実績

「勉強計画」「問題点の分析」「生徒の状態判断」の三本柱で志望校合格に導きます。

コース・料金紹介

偏差値55、60、65の壁を超える。生徒の能力にあったコースを展開。

高校三年生で模試偏差値50以下の状態から本格的な勉強を始め、東北大学文学部・慶應義塾大学文学部・早稲田大学教育学部・学習院大学文学部など最難関大学に現役合格したエンライテック卒業生の体験談です

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