高1の夏休みにするべきこと

「夏休み、生徒達はどのように過ごすべきでしょうか。」

実はこの問いは我々塾講師にとってとても難しいものです。高2や高3については「こうすべき」という明確なタスクがある一方で、高1にはそれがありません。特に大学入試の観点から言って、「これをやっておかないと取り返しがつかない」というものがないのです。では何の影響もないのかといわれればそれも違います。高1の夏の行動はその後の高校生活と勉強に様々な影響を及ぼします。ただし、その影響は一概に「Aをやるとよい影響がある」「Bをやると悪い影響が出る」とプラスマイナスをはっきりさせることが出来ないものです。

よって、ここでは高1の夏休みが三年間の高校生活においてどのような位置づけにあるのか、そして、「何をすることが可能か」だけを見ていきたいと思います。

自由に過ごせる「最後」の長期休み

上述した内容をよりストレートに表現すれば、高1は生徒が自由に過ごすことができる「最後」の長期休みです。中堅以上の大学を目指す生徒にとって高2の夏は受験のスタートです。比較的大学受験への意識が低い公立高校の生徒でも、このあたりから本格的に塾に通い出すことからもそれはあきらかです。そして、高3の夏は当然勉強で完全に塗りつぶされます。この塗りつぶされ方も高校入試の比ではなく、文字通り「寝ている時間以外はすべて勉強している」状態になります。

ですから、大学入試のプレッシャーがちらつくことなく、自由にいろいろなことをやれるのはこのタイミング(高1の夏)をおいて他にありません。

そのような位置づけの高1夏ですから、生徒達の過ごし方も千差万別です。ただ、大体の生徒は「部活動」「友人との遊び」「趣味」の三点に時間を割いていますので、おそらくそれらが定番の選択肢になります。いずれも学力と直結することはありませんが、その後の人生に役立つ様々なスキルを得られるとても大切なアクティビティばかりです。

保護者の立場から見ると、朝から晩まで部活をやっていて大丈夫なのだろうか、ずっとゴロゴロして、たまに外に出たと思ったら友達と遊びに行くばかり、大丈夫なのだろうかと不安に駆られる瞬間はあるかと思いますが、それが出来るのは今年だけですので、むしろ最後のチャンスとして見守ってあげてよいでしょう。

やれること① 興味を掘り下げる

さて、ここまで述べたように、高1の夏は基本的に生徒がやりたいことを存分にやる時間です。ただ、それらの「やりたいことやる」際にできれば意識して欲しいポイントがあります。

それは「自身の興味を掘り下げる」こと。

このように書くと「本を読ませる」や「美術館・博物館に行かせる」といったある種“堅い”指示を連想しますが、それほど重たいものではありません。生徒がやりたいことをやっているときに、「なんでこれをやりたいんだろう」「将来につながる何かがないかな」となんとなく探しておくだけでよいのです。

例えばゲームが大好きな生徒であれば、ゲームをやりながら「自分は何でこれが好きなんだろう」と考える、あるいは「ゲームのどこに惹かれるんだろう」と考えます。今流行りのスマホゲームであれば、それはキャラクタの造形かもしれませんし、ストーリーかもしれませんし、あるいはゲームシステムそのものかもしれません。普段意識しない「なぜ」に目を向けてみると、自覚していなかった自分の趣味嗜好や興味の方向性がぼんやり浮かび上がってくることがあります。

部活動の例でいえば、テニス部に所属し朝晩テニスのことばかり考えている生徒が「自分はテニスの何に魅力を感じているのだろうか」と自問してみると、そこにも様々な答えが出てくることでしょう。勝つ快感を味わいたいのかもしれませんし、ボールをラケットの芯で捉えたときの爽快感がお気に入りなのかもしれません。おそらくはそれらの感覚の総体がテニスの魅力なのでしょうが、改めて自問するといくつかの要素に分解することが出来ます。

つまり、簡潔に言えば「自省」です。一見すると大学入試とあまり関係がない内面的な話に感じますが、これは大学入試にも大きな影響を与えるファクターなのです。

生徒の多くは高2の夏以降に本格的な進路を考え始めます。その際我々は生徒面談を通して彼らの進路を具体化する手助けをするわけですが、自身の趣味嗜好や興味を明確に把握しているのは実は三分の一程度。残りの生徒達は「とくにやりたいことはないです」「好きなことは一応○○ですけど大学とは関係ないです」と答えます。我々としては、興味の土台さえあれば、それをきっかけに志望校を提案し勉強計画を立案することができるのですが、土台がないと何もアドバイスをしてあげられません。結果として生徒は高2の夏から興味の土台探しを始めざる得なくなります。

しかし、大学入試がリアルに迫り具体的な勉強をどんどんしていかなければならないタイミングですから、抽象的な自分探しを並行して行うのは少し大変です。特に多いのは「明確な目標が決まらないから勉強に手がつけられない」と、目標がないことが勉強をしない口実になってしまうパターン。このパターンにはまってしまうと場合によっては高3の夏あたりまでの時間をロスするハメになってしまいます。逆に興味の土台がある生徒は話がスムーズになります。それが大学の学問に直結しない場合でも話を広げていく切っ掛けにはなります。例えばテニスの勝利する快感が好きな生徒であれば、課題や模試での「勝利条件」を明確に示すことでそれをモチベーションとして勉強を進めていくことができるでしょう。

やれること② 武器に出来る教科を作る

次は勉強面で出来ることを見ていきたいと思います。塾で生徒達を指導してきた経験から考えるに、「一学期の復習をしっかりして二学期に備えなさい」という指示はあまり意味をなさないことが多いようです。

もちろんこの指示は至極まっとうなものです。というのも、高校の勉強は、学校になじむための助走期間であった1学期と異なり、2学期からは一気に難度とスピードが上がります。さらに、高校の勉強の方が中学校のそれよりも「積み重ね」が重視されるため、1学期の内容に穴があると、その内容を下敷きにして進む2学期の内容がますます分からなくなっていく傾向にあります。ただし、これらの理由は頭では理解できたとしても、それを聞いて生徒がやる気になるかというと疑問符がつきます。高校入試を終え、さぁ楽しもうと浮き足立つ夏に「復習しなさい」というマイナスを埋めるための指示は地味過ぎて受け入れてもらえません。

それよりも、「武器にできる」教科を作るというプラスを作り出す指示のほうが時期に合致します。学ばなければならない内容に比して勉強時間が少ない現役生はある程度優先順位をもって勉強を進める必要があります。全教科同じような学力で、そのすべてが合格水準に及ばない状況よりも、1〜2教科は水準を超えている(残りの教科は遠く及ばない)状況の方がメンタルを維持しやすく、勉強計画を立てやすいのです。このあたりの感覚は高校入試と大学入試の大きな違いですので、高校入試の経験を引きずりすぎると失敗するポイントです。

では、武器にする教科は何でもよいのかというと、残念ながらそれは「英語」か「数学」のどちらかであることが望ましいでしょう。現役生の場合、時間のかかる英・数を高2までの二年間で終わらせ、理社と国語(古文・漢文)を三年でやり込んで仕上げる形が一般的です。理由は教科の特性と授業進度が絡んできますので詳しくは書きませんが、理社や国語(古文漢文)を高1の段階で尖らせても残念ながら高3になったときにもう一度やりなおすことになってしまうのがほとんどです。

次に、「英語」と「数学」の2教科で、何をすれば「武器に出来るのか」を考えていきます。これに関しては明確に高1のタイミングだからこそできることがあります。それは「理由をとことん追求する」こと。

高校英語、高校数学ともに内容は非常に多く、どうしても「よく分からないけど覚えとけ」となってしまうことが多い教科です。例えば高校で学ぶ英文法には文法の基本法則を外れた例外事項が多く出てきますが、それをただ暗記してしまうか、例外になっている理由を追及していくかどうかで後の成績の伸びが大きく変わります。より具体的には、一冊の文法問題集(エンライテックで指示されているもの)を解き、間違った箇所の中でも理屈が分からないものは“必ず”文法参考書(学校で渡されているもの。難関校狙いの生徒は『ロイヤル英文法』)をチェックして解決し、理解した内容を“自分の言葉で”まとめておくという作業をします。

数学では、教科書をしっかり“本として”読み、理屈が分からないところを問題集(『チャート』)で解決し、類題をやって確認する作業となります。その際に途中式を細かくノートに書き、どこのプロセスでつまづいたのかをはっきりさせるとともに、解決した内容を“自分の言葉で文章として”まとめておきます。

英・数ともにポイントは「分かったと思えるまで徹底的に調べ尽くす」姿勢です。文法書や問題集に載っていなければより専門的な参考書を本屋さんで探す、あるいはインターネットをひたすら検索しても構いません。チラッと参考書に目を通しただけ、というよくあるアリバイの勉強から脱皮し、時間を湯水のように使って執念深く理解を求める経験を是非して欲しいと思います。理解を最優先するため速度が犠牲になっても構いません。アリバイ勉強から抜け出すことができれば、速度については後でいくらでも挽回することができます。

保護者の方に知っておいていただきたいこと

これまでに挙げた内容をまとめておきます

  1. 高1の夏は基本的に自由にさせて大丈夫
  2. やりたいことを「意識的に」やらせる
  3. 英・数どちらかの教科を武器にする

1については、上に述べたように、この時期に「取り返しがつかなくなる」ことは基本的にありませんので、生徒が夏をエンジョイする様を安心して見守ってあげてください(ただし、東大・国公立医学部を本気で目指す生徒の場合は状況が異なりますので、講師にご相談ください)。

2、3についてですが、保護者の方が細かい指示をするのは生徒の年齢的にも難しくなっています。基本的にはエンライテックの指導に従うようお声がけください。

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