先月の文系・理系選択に引き続き、高校一年生のこの時期は徐々に、将来進むべき学問分野について検討を始めるタイミングでもあります。文理ともに大学には多くの学問分野が学科として設置されています。基本的には将来つきたい職業から逆算して選んでいくことになりますが、一部注意を要する学科も存在しますので、今回は各学科選択の際のポイントを列挙してみたいと思います。

理学系

数学・数理学系

  • 物理現象との関係性を抜きにして、純粋に数学を追究する学部
  • 新しい公式を見つけたり、難問を解いたりする「純粋数学」と、数学を経済モデルやデータの解析などの実社会に応用する「応用数学」に分かれる。応用数学はどちらかというと工学部寄り
  • 数学をツールとして使うのではなく、それ自体を探求するため、数学「自体」が心の底から好きな生徒でないと厳しい(得意なだけではついて行けなくなる可能性あり)
  • 文系の哲学と近縁
  • これまで就職が厳しい(研究者か教員になるしかない)と思われていたが、近年では金融機関やIT関係での需要が生まれてきた

物理学系

  • 物理現象を抽象化し、幅広いモデルを作成することを目指す
  • 高校で学ぶ「力学」「熱力学」「電磁気学」「液状力学」をベースに、大学ではそれらを組み合わせ、細分化した近代物理学を研究する。例えば「相対論」「量子力学」「原子・素粒子物理学」「物性物理学」など
  • 純粋な物理学科は数学、化学と並んで数が少なく、ほぼすべてが難関大学にしか設置されていない
  • 数学を多用するため、数学が得意でないと厳しい

化学系

  • 物理学と同様、自然現象を抽象化することを目指す
  • 数学・物理学・生物学と密接に関係する。研究では実験の占める割合が多く、実験スキルと根気が必要
  • 純粋な化学科は数学や物理学と同様少ない

生物学系

  • 地球上のありとあらゆる生物(微生物・植物・動物)の生命現象のメカニズムを解明する学問
  • 生物の生態や進化の仕組みを研究する「生態学」「生物分類学」「進化学」、生物の発生の仕組みや遺伝の仕組みを研究する「生理学」「発生学」「分子生物学」などなど、非常に細かく多岐にわたる
  • 化学同様実験も多く、フィールドワークを行うことも多い

地学系

  • 地球がどんな物質で形成され、どんな構成なのかを研究する学問
  • 地震や火山のメカニズムを研究する「個体地球科学」、空や海で起こる現象を研究する「大気水圏科学」などがある
  • 最近では環境分野の研究も盛んに行われている

工学系

機械工学系

  • 工学系の花形の一つ
  • 物理学の理論を現実世界で応用し、実用性の高い技術の研究開発を目指す
  • あらゆるテクノロジーを統合し、システム化し、新たな機械・機器・装置を生み出していく点が特徴
  • 一般的な機械からエンジン、航空機までその範囲は幅広いが、電子部品、電化製品は別系統
  • 「物作り」のイメージに最も近い学部の一つ

電気・電子工学系

  • 工学系の花形の一つ
  • 電気工学は電気をエネルギーの観点から研究し、発電や電気機器制御などの研究を行う
  • 電子工学は電子を情報通信や電子制御法への応用を研究する
  • 電子部品、電化製品など、電気に関わる実用性の高い技術の研究開発を目指す
  • 近年の様々な製品や技術は情報技術と一体化しているため、セットで学ぶことも多い
  • 「物作り」のイメージに最も近い学部の一つ

情報工学・通信工学系

  • 光ファイバーをはじめとする光通信技術、スマートフォンなどのモバイル技術、マルチメディアの伝送技術などを研究する
  • ハード面(コンピュータそのもの)とソフト面(プログラミングやソフト設計)の両方から研究を行う
  • 昔は電気系に含まれていたが、需要の多さから独立した学科として設置されているところも多い
  • 守備範囲が広く、いわゆる「パソコン関係の仕事」に就きたい場合にはとりあえず電気系かここ
  • イメージに反してプログラミングを純粋に学ぶところは少なく、どちらかというとそれらをツールとしてシステムの構築研究に重点を置いている

建築学系

  • その名の通り建物の建築を研究する
  • 大きく分けてデザイン面の「意匠設計」、建物の強度や構造を研究する「構造設計」、電気や空調などの内部設備を研究する「設備設計」がある
  • 建築史や意匠を学ぶことができる学部もある
  • 入試に実技として「デッサン」を課す大学もある

経営工・システムデザイン

  • 扱うテーマは文系の経営学とほぼ同じ
  • 理系畑の経営工・システムデザインでは「数学的分析」をメインで行う点が異なっている
  • 理系だけでなく、数学が得意な文系で経済・経営学部志望の生徒が目指すのも良い。

土木・環境工学系

  • 建築学が一戸建てやマンション、高層ビルなどをカバーするのに対し、土木・環境工学は道路・ダム・鉄道・上下水道といった分野をカバーする
  • 都市計画や災害対策なども研究を行う

材料工学・資源工学系

  • 鉄やアルミニウムなどの各種金属、セラミックスや半導体などの無機物、プラスチックなどの有機物など、新素材を生み出すことを研究する
  • 各種工業製品の原材料を高機能かつ環境にやさしいものにする事が目的
  • 各種メーカー就職を考えるなら、機械工とならんで選択肢に入れておくとよい

航空・宇宙工学系

  • 航空機やロケットの研究を行う学問。ボディの設計やエンジン設計などを行う
  • また、大学によっては機体の操縦を学び、パイロットを目指す学部もある

生物・医用・生体工学系

  • 「生物学・医学」+「工学」といったイメージ
  • 手術ロボットや脳波測定器といった医療用機械の開発を研究したり、人工臓器や再生医療を研究したりする

応用化学系

  • 基礎研究で明らかになった新しい化合物を、新薬・新素材・食品・環境保護などに応用する方法を研究する
  • 食品系や化粧品系、生活用品系などメーカー就職に強い

応用物理学系

  • 量子コンピュータ、超電導、燃料電池、原子力などがキーワード
  • 上記の工学部よりは理論寄り。未来の科学技術を大きく変えていくものを研究する

農・畜産・水産・獣医学系

農学系

  • 現代の農学は「遺伝子から地球環境まで」を扱う最先端の総合生命科学
  • 農学・園芸学は作物の効率的な生産や品種改良などを研究する
  • 農芸化学は「化学」+「生物学」。生物を分子・細胞レベルでとらえ、その生命現象を解明し、食品・医薬品・化粧品などの分野で応用する
  • 農業経済学は文系の経済学部と近く、農業に関係する経済問題を扱う

産学・動物学系

  • 家畜の飼育法や効率よい生産方法、畜産品の有効利用を研究する
  • 他にも畜産を支える環境づくり、環境保全の方法、飼料の栽培なども研究する

水産学系

  • 大きく分けて海洋中の生物を研究する「海洋生物科学」と海洋の生物資源を研究する「海洋資源科学」に分けられる
  • 船に乗って長期間実習を行う大学もあったりとフィールドワークも多い
  • 畜産学・水産学を学べる大学は少ないので興味のある人は早めに調べる必要あり

獣医学系

  • 獣医師免許を取るための学部で6年制である
  • 獣医師はペットや家畜の診療だけでなく、絶滅危惧種の保護や動物用医薬品の研究開発も行っている

医・歯・薬学系

医学系

  • イメージ通り医師になるための学部で6年制
  • 4年間で医学の基礎を学び、5,6年時に実習を行う
  • 医師免許取得後は2年間の臨床研修を経て一人前の医師となる

歯学系

  • 歯科医師になるための学部で、医学部同様6年制
  • 虫歯治療だけでなく、入れ歯や差し歯を作ったり、再生医療を学んだりと口腔全般のスペシャリストを目指す
  • 医学部同様大学病院での実習がある

薬学系

  • 6年制は薬剤師を目指す、4年制は院に進学して研究職を目指すという大まかな違いがある
  • 卒業後は薬剤師になるだけでなく、製薬会社で新薬研究を行ったり、化粧品メーカーに就職する人などもいる

看護・医療・栄養・家政学・体育系

看護学系

  • 1~2年次に基礎看護学を学んだ後、各看護分野を学ぶ。医学部同様、病院での研修も多い

医療学系

  • 理学療法士、作業療法士、救急救命士、柔道整復師など様々な資格を目指せる学部
  • いずれの学科でも実習が多くある

栄養学系

  • 生活習慣病が増えてきている現代において、医学や農学と連携しながらこれらの発症の仕組みや栄養素の機能について勉強する
  • 栄養士の資格は栄養学系の学部を出ればとれるが、管理栄養士は国家資格なので試験に合格する必要がある

家政・生活科学系

  • 家政学は衣食住を中心とする生活環境の課題をはじめ、少子高齢化やグローバル化といった人間社会の問題を自然科学と社会科学の両面から扱う
  • 児童学や子ども学もこの系統で、保育士を目指したい、保育を学びたいならこの分野

体育・健康科学系

  • アスリートや体育教師を目指すだけでなく、スポーツや健康を科学する学問
  • 様々な資格を取れるところも多いので、取りたい資格がある人は各大学で取得可能か調べること
  • 研究の性質上理系に分類したが、文系でも受験可能

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