本格的に受験勉強のスタートを切った高2生にとって、自身の勉強の効果を確かめるとともにその進む先を決定する材料となるのは「模試」しかありません。これまでも生徒達は様々な模試を受けて(あるいは受けさせられて)きたことと思いますが、しっかりと活用する必要が出てくるのはまさにこれからです。今回はこの「模試」についてその意義と使い方を再確認していきたいと思います。
模試とはどのような存在か
大学受験業界には、いわゆる大手と呼ばれる予備校がいくつか存在します。これらの予備校は講師が生徒に授業を行うことを主な業務としていますが、これは人体でいえば「肉」の部分。最も重要な「骨」にあたるのは実は各予備校が独自に行う「模試」です。各予備校は広く受験生を集めて模試を行い、その成績データを入手します。そして、そのデータから大学の入試難易度序列を作り出します。この序列は本来は文字通り入試の難易度だけを示す数値に過ぎませんでしたが、いつしか大学自体の品質、クオリティを示すものと取り違えられるほど一般化し、大学受験に直接関わる高校だけではなく、新卒生を選抜する会社にも、あるいは序列化される当の本人である大学にも強い影響力を示すこととなりました。
ストレートに言葉にするのは難しいですが、模試とそこから算出される入試難易度序列が一般化すればするほど、それを実施する予備校は「権力」を持つことになります。これはとても魅力的です。そして、この「権力」を持つためには、その模試が多くの受験生に受験されている大規模なものでなければなりません。人数がしっかり集まらないと入試難易度序列が不正確になってしまうからです。
多くの生徒に受験して貰うための最短ルートであり王道は問題のクオリティを上げることでしょう。大きな模試になればなるほど多くの教育関係者の目にさらされます。学校の先生や予備校以外の塾の講師もかならず解きますし、場合によっては保護者の中にも解かれる方がいます。このような状況で、ある模試が「ただ難しいだけの問題」「答えが論理的に定まらない問題」「ただ知識を尋ねるだけの問題」ばかりを適当に出題するとどうなるか。教育関係者は一斉に批判します。○○模試はレベルが下がった。あれでは入試本番を占えない。うちの生徒に受けさせるのはやめよう。こうなります。実際のところ現在の大手予備校であればネームバリューだけで受験生を集めることは可能ですが、手を抜くと必ず数年後に手痛いしっぺ返しをくらうことになります。だからこそ、各予備校は模試の作成に非常に大きな労力を割くのです。
模試と入試問題の関係
模試についてあまり知られていないポイントとして、本番の入試問題との相関関係があります。模試は基本的に各大学の入試問題を研究した上で、そのエッセンスを取り込む形で作成されます。つまり入試問題が模試に影響を与えています。しかし、常に入試問題→模試問題の流れになっているかというとそう単純ではありません。
実は、模試が作った問題の傾向(流行)が本番の入試問題に影響を与えることもあります。大学入試問題の場合、変な問題を作ると凄まじい批判・批難を浴びることになりますから、それらを徹底的に突っぱねてオリジナリティ100%の問題を作り続けられるところはそれほど多くはありません。そうなると問題作成者としても「現在のスタンダードな問題」を、模試を見て確認しておく必要があります。
模試への「誤解」
ここまで長々と書いてきた理由は、生徒達(あるいは保護者の方の)の模試に対する誤解を解きたいとの思いがあるからです。誤解の大半は
- 模試はあくまで模試だから、入試問題とは直接関係ない
- 模試で出題されるところは全範囲のほんの一部に過ぎないから、その成績は実力とは一致しない
- 模試は大学に受かるかどうかを見るものだから、入試本番に試験範囲がないのと同様に、準備などせず受けるべき
といったところです。一つ一つ見ていきましょう。
まず一番目。もちろん模試の問題と全く同じものが入試問題で出題されることはほとんどありません(ほぼ同じものであれば稀にあります)。しかし、それを言ったら過去問も同様ですし書店で販売されている様々な問題集も同様です。ですが、上述したような状況から、模試、過去問、問題集の三者の中で最も類似した問題が出る可能性が高い(入試問題に近い)のは模試です。
次に二番目を見てみましょう。これはとてもよくある誤解です。確かに模試は膨大な試験範囲の中からほんの一部のポイントだけをピックアップして問題が作られています。よって、ピックアップされていない部分はすべてマスターしているのに、ピックアップされた部分だけが習得できていなければその生徒は著しく低い得点をたたき出すことになります。よって、実力と点数は乖離します。ここで重要なのは、模試がピックアップする部分こそがまさに、本番の入試問題でピックアップされる可能性が極めて高い分野だということです。つまり、模試で出題される1割の部分をできず、他の9割ができる生徒は、模試でゼロ点を取ると同時に入試本番でもゼロ点を取る可能性が高いということです。確かに生徒の実力とはズレますが、入試では不合格になります。そうなって「実力と違う!」と叫んでも意味がありません。実はこの「模試が出題する分野だけできてないけど他はできている」というパターンは結構多く、この生徒ならばこのくらい点が取れるだろう、という講師の予想が外れるとき、その理由の3〜4割くらいはこれです。
最後に三番目。定期テストと比べたときに模試をこう捉えてしまう生徒がいます。ですが、高3の半ば過ぎの模試であればともかく、高1、高2段階の模試で大学に受かるかどうかの判断などすることは不可能です。そもそも試験科目自体が揃っていない(理社科目がない)のですから。もちろん成績表に判定が書かれることはありますが、それはおまけのようなもの。我々講師は判定欄を全く見ていません。意味が無いからです。高3ではどうなのかというと、そもそも夏過ぎの模試には試験範囲自体がありませんから、試験範囲に合わせた準備はできません。九月以降の模試はまさに「合否を占う」ものです。
模試の使い方
シンプルに書いてしまうと、(高1〜高3夏までの)模試は
合否の可能性を占うものではなく、実力を「確かめる」ためのものでもありません。実力を「高める」ためのツールです。
模試は受験に受かるためにやらなければならないところ(入試でピックアップされるところ)を教えてくれるものです。模試で点数が取れないということは、入試がピックアップする部分に対して自分の学習が不十分であることを示しているに過ぎません。攻略すれば良いだけです。
- 模試で自分が勉強している部分が入試で重視されている部分とズレているかどうかを判断する
- ズレている場合はそこを埋める
これを延々と繰り返していきます。この文章冒頭に、模試がいかに“本気で”作られているかお話ししましたが、模試でピップアップされている分野をすべてつなげてみると、見事にその教科の「重要ポイント集」になっていることが分かります。極言してしまえば、模試を受けた後、その内容をすべて咀嚼しきるだけで気がついたら受験勉強のほとんどの部分が終わってしまうのです。それくらいバランスよく問題が配置されています。
よって、高2の半ばから高3の終わりまで、受験生は「模試」が示す道筋をしっかり付いていくことを第一目標とします。
模試を受けた後の分析の仕方、攻略の仕方については講師が細かく指導をしています。まずはその指導に(本気で)従って型を作り、徐々に自分のアレンジを加えていって欲しいと思います。
まとめ
今回の内容は、これまでに取り上げたことを再掲している部分がありますが、それには理由があります。まだ範囲も狭く難度も低い、いわば定期テストのハード版に近かった1年次から2年夏までに比して、これからの模試は「本気モード」になります。来年の頭にある第四回の全統模試ではいよいよ理社科目も出題されます。つまり、これまでに増して模試の重要性が高まるのです。
生徒達にも随時講師が伝えている内容ではありますが、保護者の皆様にも模試の重要性を今一度認識していただければ幸いです。
高校三年生で模試偏差値50以下の状態から本格的な勉強を始め、東北大学文学部・慶應義塾大学文学部・早稲田大学教育学部・学習院大学文学部など最難関大学に現役合格したエンライテック卒業生の体験談です
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